言いたい事は分かります。
確かにHIVの正しい情報に乏しい事で、
不必要に警戒してる人がいるのは事実だし、
正しい情報、最新の情報を常に発信すべきだとは思います。
しかし、どうしてそこで偏見とか差別とかって言ってしまうのか……
そういう言葉を使ってしまうから、
感情的になって素直に意見を受け入れられなくなるという面があり、
寧ろ、反感や嫌悪感を生んでしまい、逆効果なのではないでしょうか。
「普通に働けるのに、落とされることも…」
根強く偏見が残るHIV・エイズ、就職差別も※
ニコニコニュース/AbemaTIMES さんの記事
職場の件も、単純に企業を責める事は出来ないと思います。
記事にもある通り、HIV感染者は免疫機能障害の認定基準を満たせば、
身体障害者の認定を受け、手帳の交付を受ける事が出来ます。
日常生活を普通に送れている人であっても、
検査の結果が認定基準に該当する場合には、
少なくとも2〜4級の認定を受ける事が出来ます。
また、障害者雇用促進法43条第1項により、
従業員が一定数以上の規模の事業主は、
従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を
法定雇用率以上にする義務が課せられています。
障害者雇用率制度によって法定雇用率は決められており、
民間企業の場合は、従業員45.5人以上を雇用している企業が対象。
法定雇用率は2.2%以上とされていますから、
従業員45.5人以上なら障害者を1人以上雇用しなければなりません。
尚、2021年4月には、さらに0.1%引き上げられる予定です。
一方で、先の障害者認定に関して、
その障害の特異性から、他の身体障害者認定とは異なる点があります。
例えば、認定基準の項目にある、
・1日1時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感
及び易疲労が月に7日以上ある
・月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)が2か月以上続く
・1日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある
・1日に2回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある
・日和見感染症の既往がある
・生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である
・軽作業を越える作業の回避が必要である
これらのどれかに該当項目があり、
他の項目とも合わせ1級の認定と受ける事となったします。
しかし、これらの症状が改善されて普通に日常生活が送れる様になり、
他の項目とも合わせ、認定基準を満たさない状況になったとしても、
1級認定が変わる事はありません。
1度認定を受け、その後症状が改善されたとしても、
抗HIV療法(HAART療法)を継続実施している間は、
原則として再認定は要しないとされているからです。
再認定が実施されるのは、
治療の経過から抗HIV療法を要しなくなると想定される場合であり、
再認定が実施されるのは、抗HIV療法を要しなくなった後です。
これは障害の特異性から、その様な仕組みになっているのです。
こういう点もまた、企業側が採用を渋る要因として、
背景にあるのかなと思います。
また、就職で苦戦を強いられた理由も、
HIV感染者の受入体制が理由として述べられているのは1例です。
全ての企業が、本当にHIV感染者を理由にして断ったのか、
その点は、あくまで本人の想像でしかありません。
また「何回も転職した」というその理由は何だったのか?
HIV感染者に対する企業・職場の対応などが原因だったのか?
そこが明確にされていないので何とも言えないです。
そういう意味で、一方の事情だけを主張するのでは無く、
双方から事情を聴く事も必要ではないかと思います。
かつて日本でも、感染者数が広がって行く中で、
HIV感染、AIDSの恐ろしさを伝える続けるのを見てきました。
一方でその後の最先端の治療・現状はどうなっているのか、
そういった報道などを目にする機会はあまり無かった様に思います。
その様な発信の少なさというのも、
大なり小なり影響はしていると思いますし、
改善が必要なんじゃないかなと思います。
妊娠・出産の件については、HIV感染者でも妊娠・出産は可能です。
性的接触は感染リスクがあるのでアウトですが、体外受精なら問題無いです。
また、母子感染については、経産道感染なら帝王切開で回避は可能ですし、
経母乳感染は粉ミルクなどの使用により防げます。
但し、経胎盤感染については物理的に防ぐ事は不可能であるため、
HAART療法によって母体のウイルス量を下げる事によって、
感染確率を減らすという方法になります。
ここで今一度、簡単ではありますがHIV感染症、
AIDSについて書いておきたいと思います。
エイズ(AIDS)とは、後天性免疫不全症候群の事。
Acquired Immunodeficiency Syndrome の略称。
HIVウイルスに感染する事により、
免疫機能が低下してしまうため、
種々の病原体に対する抵抗が失われてしまう病気です。
HIVウイルスとは、ヒト免疫不全ウイルスの事。
Human Immunodeficiency Virus の略称。
このHIVウイルスが、免疫細胞であるCD4陽性Tリンパ球に
感染してしまう事により免疫機能が低下してしまいます。
HIVウイルスに感染すると、
通常6〜8週間程経過した後、血中にHIV抗体が検出される様になります。
急激なウイルス増加による急性症状により重症化する事もありますが、
多くの場合は、以下の様な経過を辿る慢性化する感染症です。
感染後2〜6週間で、インフルエンザに似た症状などが出ます。
これを急性感染期と呼びますが、数日〜2、3ヶ月程度で回復します。
以後、無症候期間が長く続きます。(約5〜10年)
この期間を無症候期と言い、この状態にある人を無症候性キャリア(AC)と言います。
その後、免疫力が低下していく事により、
それまで(健常時)は免疫機能によって抑えられてきた
病原性の弱い微生物或いはウイルスよって様々な症状が現れ、
日和見感染などを起こす様になります。
この状態を以て「エイズの発症」とされます。
尚、日和見感染とは、健常者なら普通は感染症など起こさない様な、
病原体によって引き起こされる感染症の事です。
これは、AIDS患者だけではなく、
免疫機能が低下する病気、免疫抑制効果のある薬剤を投与する様な治療、
例えば臓器移植の際の免疫抑制剤や抗ガン剤治療などです。
また、加齢による免疫力低下などでも引き起こされる事があります。
エイズ発症とは、以下の23の指定された日和見感染症のうちの
どれかにかかった際の事を言い、これらをAIDS指標疾患といいます。
真菌症
・カンジタ症・クリプトコッカス症・ニューモシスチス肺炎
・コクジオデス症・ヒストプラスマ症
原虫症
・トキソプラズマ脳症・クリプトスポジウム症・イソスポーラ症
細菌感染症
・非定形抗酸菌症・化膿性細菌感染症・再発性サルモネラ菌血症・活動性結核ウイルス感染症
・サイトメガロウイルス感染症・単純ヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹)
・進行性多巣性白質脳症
腫瘍
・カポジ肉腫・原発性脳リンパ腫・非ホジキンリンパ腫・浸潤性子宮頸癌
その他
・HIV消耗性症候群・HIV脳症・反復性肺炎・リンパ性間接性肺炎
この中でも代表的な日和見感染症としては、以下の5つがあります。
・カンジダ症・ニューモシスチス肺炎・サイトメガロウイルス感染症
・帯状疱疹・カポジ肉腫
カポジ肉腫とニューモシスチス肺炎については、
AIDSが知られ出した頃、よく紹介されていた感染症なので、
名前を聞いた事があるという人も多いかと思います。
HIV感染或いは発症後も、適切な治療を継続して受ける事で、
発症予防・症状の改善は可能です。
治療方法としては、複数の抗HIV治療薬を各々の症状・体質に合わせ、
組み合わせて服用するHAART(ハート)療法(多剤併用療法)が基本的に用いられます。
これはHIVウイルスが突然変異を起こし易い事から、
そういった耐性変異を防止するという目的もあります。
このHAART療法の登場や新薬の開発、適切な日和見感染症予防などによって、
AIDSによる死亡率は低下、予後も改善される事となりました。
また、余命も若年の成人で20〜50年と、
健常者の2/3からほぼ同じ程度にまで伸びました。
但し、この数字はあくまで20代で感染した若年成人の例であり、
また、適切な治療・予防を続けた場合の話です。
治療開始が発症後であるなどして治療開始が遅れてしまうと、
予後はあまりよくはなく余命も10〜40年と短くなります。
また、HIV感染は完治・治癒する事が困難なため、
この様な抗ウイルス薬による治療の継続が不可欠で、
1度はじめたら一生続けなければなりません。
その理由として、先の耐性変異の問題があるワケです。
他の疾病などもそうですが、
早期発見と適切な治療を継続する事。それが重要なのです。
特に、日本人のHIV感染者は同性間(両性間含む)の性的接触が約66%、
次いで異性間の性的接触約23%です。
こういった性的接触後に体調不良などを起こした場合には、
最寄りの保健所等で無料・匿名でのHIV検査が受けられますので、
早目に検査を受ける事をお薦めします。
尚、異性間の性的接触(膣性交)の場合は、
コンドームを適正に使用すれば予防措置として有効です。
但し、使用中に破れたりする事もありますし、
劣化したものを使用する場合もあるため、完全とは言えません。
信頼性の高い製品を使用期限に用法を守って使用するのが大切です。
因みに、性器同士を摺り合わせる様な行為でも、
場合によっては感染する危険があります。
またフェラチオでも、口内に傷がある様な場合に感染する事があります。
一方、同性間の性交を含む肛門性交の場合は、
膣性交よりも感染リスクは高くなりますが、
曝露前予防内服(PrEP)という事前に薬剤を投与する事で、
高い予防効果があるという報告もあり、
毎日ちゃんと服用すれば90%以上の予防効果があると考えられています。
さて、母子感染については先に書きましたが、
基本的に、HIVは体液感染です。
そして感染源となり得るだけのウイルス濃度を持っている体液は、
血液、精液、膣分泌液、母乳です。
これらを介しての接触により感染しますが、
HIVウイルスは、体外に出ると直に不活化する脆弱なウイルスです。
また、唾液や涙といった分泌液中には存在しないか、
感染源となり得るだけのウイルス量は含まれません。
なので、日常生活における感染リスクは限りなく0に近く、
事実、風呂・タオルの共用などによる感染事例の報告はありません。
という事で、日常生活を送る上でのHIV感染者との接触を、
必要以上に警戒し、怯える必要などはありません。
私がQUEENファンだからという事でも無いですが、
ブライアン・メイやロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンらは、
フレディ・マーキュリーのHIV感染公表後も、
共にツアーやレコーディングを行ってましたが、感染などしてません。
【PR】


人気ブログランキングへ【PR】
テーマ : 思うことをつれづれに
ジャンル : 心と身体